注文書(発注書)を電子化する方法とは?電子帳簿保存法への対応
注文書(発注書)の電子化は、近年、多くの企業が取り組むべき重要な課題となっています。
紙ベースの注文書を電子化することで、業務効率化の向上やコスト削減、情報管理の強化など、多くのメリットが得られます。
また、電子帳簿保存法の改正に伴い、電子化された注文書は法的に有効な文書として認められるようになりました。
この記事では、注文書を電子化する方法とその際の電子帳簿保存法への対応について詳しく解説します。企業が注文書の電子化に取り組む際のポイントや注意点についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
注文書(発注書)は電子化して保存できる
注文書(発注書)は、発注側から受注側へ送付される文書であり、商品やサービスの注文意思を示すものです。法的な義務はないものの、日本の商習慣として広く使用されています。
近年、法律の整備やテレワークの普及に伴い、電子化が進みつつあります。
電子帳簿保存法により、従来紙での保管が必要だった書類も電子化して保存することが可能になりました。電子帳簿保存法の保存要件は2022年と2023年に緩和されています。
とはいえ、電子化には様々な要件をクリアする必要があり、思ったよりも時間がかかることもあります。そのため、事前に要件を確認し、準備を進めておくことが重要です。
注文書を電子化するメリット
注文書の電子化には、企業にとって次の4つのメリットがあります。
【業務の効率化につながる】
電子化された注文書は、デジタル形式で保存されるため、必要な情報を瞬時に検索できます。
従来の紙の注文書では、必要な情報を探すために時間がかかりました。一方、電子化した場合はキーワード検索やフィルタリングを使用して迅速に情報を取得できます。
さらに、電子的なワークフロー管理システムを導入することで、注文書の承認プロセスを自動化し、遅延やエラーを最小限に抑えることができます。
【コストを削減できる】
電子化された注文書は、印刷や郵送、保管などのコストを大幅に削減できます。
紙の注文書を電子化することで、用紙代やインク代、郵送費用などの経費の節約が可能です。
さらに、手作業の時間を削減することで、人件費の削減も期待できます。これらのコスト削減効果は、企業の利益アップにつながるでしょう。
【紛失・盗難・経年劣化のリスクが低い】
電子化された注文書は、紙のものと比べて紛失や盗難のリスクが低くなります。
紙の注文書は物理的な保管場所が必要であり、紛失や盗難のリスクがつきものです。一方、電子化された注文書はデータベースやクラウド上に保存されるため、セキュリティが強化されます。
また、紙の注文書は経年劣化による情報の劣化や破損のリスクがあります。その点も、電子化された注文書はデータの保存状態が安定しているため、情報の信頼性が高まります。
【テレワークに対応しやすい】
電子化された注文書はオンラインでアクセス可能であり、従業員がリモートワークや出張中でも必要な情報にアクセスできます。
さらに、電子的なファイル共有や共同編集ツールを利用すれば、複数の従業員が同時に注文書の閲覧や編集を行うことも可能です。
これにより、従業員の生産性が向上し、スムーズな業務が実現するでしょう。
注文書を電子化する方法
注文書を電子化する方法を紹介します。
【スキャンしてデータ化する】
紙の注文書をスキャナでスキャンし、デジタルデータに変換します。スキャンされたデータは、PDFや画像ファイルとして保存されます。
保存されたデータは、適切なファイル管理システムに格納され、必要に応じて検索や閲覧が行えるようになります。
ただし、スキャン作業には時間がかかる場合があるので注意が必要です。
【OCRツールでデータ化する】
OCRツール(光学的文字認識)を使用して、スキャンした注文書のテキストを認識し、機械が読み取れるデータに変換します。
これにより、注文書のテキスト情報をデータベースに取り込んで管理したり、自動化された処理に利用したりできます。注文書の内容を見ながら手入力するよりも、はるかに速いです。
特に、人工知能を活用したAI-OCRなら、精度が高く、雑に書かれた手書き文字であっても高い確率で読み取り可能です。
【外部にデータ化を委託する】
専門のデータ処理業者に注文書のスキャンやデータ化作業を委託する方法です。これにより、データ化の作業に伴う労力やコストを削減できます。
委託先の業者は、高性能のスキャナやOCRソフトを使用して、紙の注文書を効率的に電子データに変換します。
データ化された注文書は、企業が指定した形式やストレージに保存され、必要なときにアクセスできるようになります。
【取引先に電子データで送ってもらう】
取引先に紙の注文書の代わりに、電子データとして注文書を送ってもらうよう依頼する方法です。
取引先から電子データで注文書が送られてくる場合、企業は受信したデータを直接システムに取り込むことができ、手作業でのデータ入力を省けます。
これにより、注文書の処理時間を大幅に短縮し、データの正確性を向上させることが可能です。
【電子商取引に切り替える】
電子商取引(EDI)システムを導入することで、企業は注文書や発注書などのビジネス文書を電子的に交換できます。
EDIシステムは、企業間の取引プロセスを自動化し、紙の文書を使用せずに注文や受注を処理するものです。企業は、EDI規格に準じた電子データフォーマットを使って注文書を送信し、取引先のシステムとの間でデータの自動転送を行います。
これにより、注文書の処理時間が大幅に短縮され、エラーの発生も最小限に抑えられます。
注文書を電子化する際の注意点
注文書を電子化するとき、知っておくべき注意点を説明します。
【運用フローを整備する】
注文書を電子化する際には、適切な運用フローの整備が重要です。
例えば、注文書の受領から処理、承認、記録、保存までのプロセスを明確に定義し、それらをスムーズかつ効率的に行える体制を整えます。
運用フローを適切に整備することで、業務の効率化や意思決定の迅速化、エラーの軽減など、多くのメリットが得られます。
【セキュリティ対策をしっかりと行う】
注文書には企業の重要なビジネス情報が含まれることが多いため、電子化する際にはセキュリティ対策を徹底する必要があります。
これには、アクセス制御やデータ暗号化、安全なデータ転送手段の利用などが含まれます。
さらに、不正アクセスやデータ漏えいなどのリスクに対処するため、セキュリティポリシーの策定や従業員の教育なども重要です。
【電子帳簿保存法の要件に沿って保存する】
電子化した注文書を適切に保存するためには、電子帳簿保存法の要件を遵守することが必須です。
電子データの保存形式や保存期間、情報などを確認してから保存してください。
法令を遵守するためには、これらの要件を正確に理解し、適切に対応しましょう。
【取引先企業との調整が必要】
注文書を電子化する過程では、取引先との調整が欠かせません。取引先が電子データを受け入れる準備が整っているかを確認し、ファイル形式や手続きの詳細について合意を図る必要があります。
また、双方のシステムがスムーズに連携できるように、技術的な側面やデータ形式の整合性にも注意を払ってください。
電子帳簿保存法の要件を満たした保存が必要
電子帳簿保存法は、特定の要件を満たすことで電子化された文書を法的に有効なものとして認める法律です。注文書の電子化に際しては、以下のような要件を満たす必要があります。
【電子帳簿保存法の保存要件】
電子帳簿保存法には、電子化された文書を保存するための様々な要件が定められています。
主な要件には、以下のようなものがあります。企業内で必ず確認しておきましょう。
●データの完全性を保証するためのセキュリティ対策の実施
●アクセス制限や権限管理の強化
●電子データの保存期間や形式に関する規定の遵守
●電子データ保存時のタイムスタンプの付与
【スキャナ保存の要件】
受領した注文書をスキャナ保存すると、電子データとして保存できます。スキャナ保存をする際は、以下のような要件を満たす必要があるので確認しましょう。
●画像の鮮明さを保証するための解像度やカラー
●入力の方式や期間
●タイムスタンプ
●訂正削除履歴の確保
●検索機能
参考:電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】|国税庁
【電子取引の保存要件】
電子取引における保存要件は、電子帳簿保存法の規定と合わせて考慮する必要があります。具体的には、以下のような要件があります。
●電子取引に関するデータが完全かつ正確であることを保証するためのセキュリティ対策の実施
●データの保存期間や形式に関する法定要件の遵守
●電子取引に関するデータの保存時には、適切な記録が行われること(例:タイムスタンプの付与、アクセスログの記録など)
まとめ
注文書(発注書)を電子化する方法、電子帳簿保存法への対応について解説しました。
紙ベースからデジタルへの移行は、業務の効率化、コスト削減、さらにはセキュリティの強化に役立ちます。
現代のビジネス環境において、注文書の電子化は必須の取り組みです。電子帳簿保存法の改正もあり、電子化への移行を始める絶好の機会です。
電子契約サービスや適切な保存ソフトの導入を検討してはいかがでしょうか。