ペーパーレス化とは?推進状況やメリット・デメリット
近年、働き方改革やDX、SDGsなどを推進する企業も増加しており、その一環として資料のペーパーレス化、電子化が注目を浴びるようになりました。
では、企業がペーパーレス化を導入するにあたって、どのようなメリット・デメリットが考えられるのか、世間の推進状況とあわせて解説いたします。
ペーパーレス化とは
そもそもペーパーレス化とは、文書や資料の電子化によって紙の使用を削減することです。
スキャナーを用いて既存の書類をPDFなどのデータにしたり、資料をWordやExcelといったデジタルデータで作成して端末上で閲覧できるようにしたり、などがこれにあたります。
紙の使用を減らすことは、用紙や印刷のコスト・手間の削減のみならず環境保全や社会課題の解決、SDGsの推進にもつながります。
そのため政府もペーパーレス化を推奨しており、2005年4月には「e-文書法」が施行され、紙での保存が義務づけられている法定文書の電子保存が認められるようになりました。
また、2022年1月には「改正電子帳簿保存法」が施行され、国税関係の帳簿・書類のデータ保存についても要件の大幅な緩和がされています。
働き方改革や新型コロナウイルスの流行で、テレワークを導入する企業が増加したことでも、ペーパーレス化がさらに注目されるようになりました。
近年、電子書籍も広く流通するようになり、レジャー施設やコンサートの入場券も電子チケットになるなど、ペーパーレス化は世間一般に浸透してきつつあるともいえるでしょう。
ペーパーレス化の現状
2020年3月、総務省が国内企業の従業員に「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」という調査を実施しました。
これによれば、ICT化に関連する業務慣行の改善についてもっとも選ばれたのが「社内業務のペーパーレス化」で、60.4%という結果になっています。
このうち、42.4%が3年以上前から実施、直近3年内に実施した企業は18.0%になっているなど、ペーパーレス化を推進する企業は年々増加していることが分かります。
ペーパーレス化の目的
そもそも、ペーパーレス化をおこなう目的としては、紙の使用を減らすことでの「コスト削減」や電子化による「業務効率化」、そして「環境問題への取り組み」が挙げられます。
まず、紙の使用が減れば用紙や印刷に関わるコストを削減でき、印刷や郵送といった作業も必要なくなります。
さらに、ツール上で資料の受け渡しをおこなえばどこにいても閲覧でき、必要な情報も容易に検索できるため、業務効率の向上に有効です。
また、国連サミットでSDGsが採択されたこともあり、企業としてペーパーレス化に取り組めば、環境問題に目を向けていることを社会にアピールできます。
このような理由から、ペーパーレス化に取り組む企業が増加しているといえるでしょう。
ペーパーレス化のメリット
では、資料をペーパーレス化すると企業や従業員においてどのようなメリットがあるのかについて、ご紹介します。
【コスト削減】
紙の資料を作成するには、まず用紙が必要になり、また印刷の際にはインクなどの印刷コストが発生します。従業員数の多い企業であるほどこの負担も大きくなっていきます。
それを取引先などに送付するのであれば、送料や切手、封筒といった郵送コストも掛かります。しかし、ペーパーレス化すればこのようなコストは一切不要です。
【業務効率化】
ペーパーレス化をおこなうと、資料はメールやツールなどで閲覧できるようになるため、紙への印刷や配布、封入や郵送といった手間がなくなります。
また、稟議書に関しても印刷して上司の戻りを待ち、直接手渡しして印鑑をもらう、関係者に回覧する、といった作業が不要になり、すべてオンラインで完結できます。
さらに、必要な資料を探す場合も手探りで書庫を漁らずとも、ツールや端末内で簡単に検索できるようになるため、業務効率化・生産性の向上につながります。
【スペースの削減】
資料を紙で保管する場合、スペースを確保してキャビネットなどを設置し、ファイリングするなどの方法が一般的です。しかし、当然ながら資料が増えるほど手狭になります。
ペーパーレス化すれば、このような大量の紙の資料はすべて端末やツールに集約されるため、書類の置き場所を確保する必要がなくなり、スペースを有効活用できます。
【セキュリティ強化】
個人情報や機密情報を含む資料は、情報漏えいを防ぐため施錠したキャビネットや、入退室管理を施した専用の部屋に保管するのが望ましいです。
管理状態に問題があると、従業員による社外への情報持ち出しや改ざん、紛失や誤廃棄といった事態が発生するおそれもあります。
しかし、ペーパーレス化すればこのように物理的な資料の持ち出しが困難となります。また、システムによっては閲覧権限の設定や、作成から破棄までの証跡を残すことも可能です。
また、タイムスタンプや電子署名によって原本性を担保することもできるため、セキュリティの強化にも役立ちます。
【企業イメージの向上】
近年、国内においてSDGsやESG、サステナビリティ(持続可能性)への関心が高まっています。
紙の使用を減らすことは森林資源の保護やゴミの削減にもつながるため、ペーパーレス化に取り組めば、環境問題に配慮している企業としてイメージ向上にも期待できます。
【多様な働き方が可能になる】
業務に必要な資料やデータをすべてペーパーレス化すれば、資料の受け渡しや閲覧がすべて端末上で完結できます。
これにより、出先や自宅など場所を選ばずいつでも資料を確認できるようになれば、必ずしも出社する必要がなくなり、テレワークやモバイルワークといった多様な働き方の実現が可能です。
ペーパーレス化のデメリット
前述のように、ペーパーレス化には多くのメリットがありますが、ときにデメリットとなってしまう部分もあります。どのような問題が考えられるのかもご紹介します。
【システム導入のコスト】
ペーパーレス化には、データを閲覧するパソコンやタブレット端末、既存の紙資料を電子化するスキャナー、ネットワーク環境の整備やクラウドサービスの導入といったコストが必要です。
企業の状況や規模によって導入に必要なものは変わってきますが、中小企業では数百万円以上、大企業では数億円程度がかかってしまうケースもあります。
コストがネックとなるようであれば、まずはあまり費用が掛からない方法から、段階的にペーパーレス化に取り組むとよいかもしれません。
【システム障害のリスク】
ペーパーレス化をおこなった場合、資料の受け渡しはインターネットに接続した状態で、メールやビジネスチャットなどのツールを介しておこなうことになります。
しかし、使用しているWi-Fiやブロードバンドの通信障害や、データ受け渡し用のツールでシステム障害が発生すると、一時的に通信不能になります。
こうなると、業務が一時ストップしてしまい、場合によっては緊急で必要な資料が間に合わないといった事態に陥る可能性も考えられるでしょう。
これを防ぐには、頻繁にデータのバックアップをしておく、サブ回線を用意する、データを複数の場所に保存しておくといった対策が有効です。
【資料の全体像を把握しにくい】
紙の資料は直接手に取ってひと目で全体を俯瞰しやすいという利点があります。
しかし、電子化された資料はページや図表が分割されるなど全体表示ができない場合もあり、情報量の多い資料であるほど内容を把握しにくいと感じる人もいます。
また、スマホや画面が小さめのタブレットで閲覧すると、小さく分割表示されて見にくかったり、とくにITに不慣れな従業員にとっては勝手が悪いと感じるかもしれません。
この場合、たとえば大型のモニターに資料の全体を写して解説をおこなうなどすれば、利便性の低下を防ぐことができるでしょう。
まとめ
ペーパーレス化を実施するメリットとデメリットをおさらいすると、以下のとおりです。
メリット
■コスト削減
■業務効率化
■スペースの削減
■セキュリティ強化
■企業イメージの向上
■多様な働き方が可能になる
デメリット
■システム導入のコスト
■システム障害のリスク
■資料の全体像を把握しにくい
システム導入や障害のリスクは企業としてネックとなる場合があるかもしれませんが、長期的に見るとメリットのほうが大きいかもしれません。
導入コストと導入しない場合の長期的なコストの比較、障害時の対策の検討をしたうえで、ペーパーレス化を実施するかどうか検討するのもよいでしょう。