電子化とデジタル化の違いとは?メリットや導入ステップを解説
現在、様々な企業が業務を電子化・デジタル化しています。
IT化、ペーパーレス化、DX(デジタルトランスフォーメーション)化が進行している今、業務プロセスの円滑化につながる電子化とデジタル化を実現することは、会社の成長にもつながるでしょう。
業務効率化を成功させるためには、まずは電子化とデジタル化のそれぞれの違いについて理解しておくことが重要です。そこで、電子化とデジタル化の違いや導入方法について解説します。
電子化とデジタル化の基本的な定義
最初に、電子化とデジタル化の意味や内容から解説します。
【電子化とは何か】
電子化とは、紙媒体の書類やアナログ形式の情報を電子的な形式に変換することです。
例えば、請求書などの紙の文書や写真をスキャンし、デジタルデータに変換する作業が電子化に該当します。また、紙の節約や業務効率化、テレワーク対応のために行われる「ペーパーレス化」も、電子化と同様の意味です。
さらに、OCR(Optical Character Recognition)などの画像認識技術を使用することで、電子化したデータを検索可能なテキストデータに変換することも可能です。これにより、情報の保存、共有、編集などが容易になり、効率的なデータの管理と活用が可能となります。
【デジタル化とは何か】
デジタル化とは、書類などの電子化を行った後に、業務プロセスの効率化や品質向上に取り組むことです。
例えば、社内で紙の資料を配布する代わりに、クラウド上での共有に切り替えます。これにより、印刷や配布の手間を削減でき、どこからでも閲覧できるようになります。これがデジタル化です。
業務の効率化を図るためには、デジタル化が不可欠です。単に電子化するだけでなく、業務をデジタル化して変革することが重要です。
デジタル化は、情報技術の進歩やデジタルツールの普及によって、さまざまな分野で進んでいます。ビジネスや社会のデジタルトランスフォーメーションの一環として、重要な役割を果たしているのです。
電子化とデジタル化の違い
電子化は、アナログ形式の情報をデジタル形式に変換するプロセスを指します。一方、デジタル化は、デジタル技術を活用して業務などを変革することを指します。
それぞれの目的と段階の違いについて解説します。
【目的の違い】
電子化の目的:紙の書類などをデジタルデータに変換し、パソコンなどのデバイスで扱えるようにする作業自体を指します。
デジタル化の目的:電子化で変換したデジタルデータを活用して、業務の効率化や自動化、改善、革新を図ることです。また、新しいビジネスモデルの創造も含まれます。明確な目的を定めて取り組むことで、効果をより確実に得ることができます。
【段階の違い】
順序としては、「電子化→デジタル化」の流れで進めます。最初に電子化を行わなければ、デジタル化は進めることができません。
また、デジタル化の次には、企業がデジタル技術を活用し、製品やビジネスモデル、組織を改革し、社会の形態まで変えるDX化があります。
電子化のメリット・デメリット
電子化を行う際には、電子化のメリットとデメリットについて事前に知っておくことが重要です。それぞれ解説します。
【電子化のメリット】
まずは、メリットを紹介します。
§業務の効率化§
電子化は、さまざまな業務の効率アップにつながります。従来のアナログな方法よりも仕事のやり取りがスムーズになり、業務を迅速に進めることができます。
|効率化できる業務の例
・ビジネスチャットによるグループ間のリアルタイムなテキストのやり取り、ファイル共有、タスク管理、ビデオ通話が可能
・社内情報を一元管理し、混乱を防ぐことができる
・必要な文書や文書内の検索が迅速に行える
・クラウド上でのデータ保存により、移動中などどこからでも資料を確認できる
また、効率化の結果、従業員は他の業務に時間を割くことができ、業績の向上も期待できます。
§コストの削減§
ペーパーレス化や効率化を行うことで、書類に関連するコストや人件費を削減できます。
例えば、A4サイズの白黒印刷には1枚約4円のコストがかかります。数百人もの社員が毎日何十枚も印刷すると、毎月のコストは数十万円にも上るでしょう。
そのため、書類を電子化することで以下の費用を削減できます。
・用紙
・プリンターの維持費
・郵送費用(送料や封筒など)
・書類の保管に関わる費用(棚やスペース、家賃など)
§多様な働き方の実現§
電子化により、インターネットを使ったテレワークやリモートワークが可能になると、毎日出社する必要がなくなります。これにより、自宅など離れた場所からでも働くことができます。
通勤時間や手間が省けるため、例えば遠方に住んでいても望む仕事に従事することができます。病気や介護、育児などの事情があっても柔軟に働きやすく、多様な働き方が可能です。
従業員の快適な労働環境は企業にとってもメリットがあります。離職率の低下や、家庭の事情などで通勤できなくなった従業員の解雇を避けられ、新たな採用コストを削減できます。さらに、遠方に住む優秀な人材を採用することも可能であり、会社の成長にも期待が持てます。
電子化のデメリット
デジタル技術の進歩により、情報の処理や保存・伝送が高速かつ効率的になりました。その一方、次のような2つのデメリットがあります。
§情報セキュリティ対策が必須§
情報流出やデータの改ざんは、企業の信頼を失うだけでなく、対応にも大きなコストがかかる可能性があります。
サイバー攻撃や社内からの情報漏えいといったリスクを防ぐために、情報セキュリティ対策を必ず実施しましょう。
|情報セキュリティ対策の例
・ウイルス対策ソフトの導入
・アクセス制限の実施
・従業員の情報リテラシー向上のための教育
・セキュリティ会社への管理委託
特に、クラウドシステムを利用する場合は、システムが常時インターネット上で動作しているため、機密情報のセキュリティ対策が不可欠です。
§システム障害のリスク§
データが保存されているサーバーやシステムは、障害や故障により使用できなくなることがあります。
その結果、データの閲覧ができないだけでなく、自動化されていた作業手順が不明確となるなどの問題が発生し、業務が停止する恐れがあります。
これに対する対策として、データのバックアップやマニュアルの作成などを必ず行いましょう。導入するツールは、従業員が利用しやすいように、使いやすくシンプルな製品を選ぶことがおすすめです。
電子化の導入ステップ
電子化をスムーズに進めるためには、以下の3つの手順を参考にしてください。これにより、導入時の手間を最小限に抑えることができます。
1. 電子化する書類を選別する
書類には、電子化に適しているものとそうでないものがあります。
電子化できる書類の例としては、請求書や契約書、会議資料、業務マニュアルなどがあります。
ただし、全ての書類を電子化するには時間がかかるため、重要度や使用頻度などの基準を設けて選択することがおすすめです。
一方、紙での保存が必須の書類や、廃棄すべき書類も存在します。法律上、紙で保存が必要な書類を誤って処分しないように注意してください。選別する前に確認し、電子化する書類としない書類を分けるようにしましょう。
2. データの保管方法を決める
つづいて、将来的な運用方法を考慮し、データの保管方法を決めます。以下のポイントについて決めておきましょう。
書類の大きさ | 最も多いA4サイズ以外の書類について、A4サイズに統一するかどうかを決めます。 |
ファイル形式 | 軽容量のPDF、または画像形式のjpgやpngなど、ファイル形式を決定します。 |
ファイル名 /ファイル階層 | 検索しやすいファイル名と、ファイルを保存するディレクトリの階層構造についてルールを決め、バラバラにならないようにします。 |
OCR処理の有無 | 画像内の文字を認識してテキストデータ化するOCR処理を行うかどうかを判断します。 |
解像度 | 解像度のおすすめの設定は、印刷文字などの一般的な書類は200dpi、文字が小さい書類や写真は300~400dpi、手書きの書類ではパソコンで作成した書類よりも高い解像度です。 ただし、解像度が高いからといって必ずしも品質が向上するわけではなく、ファイルサイズが大きくなる可能性もあるため注意が必要です。 |
3. 書類をスキャン・保存する
書類をスキャンする方法には、主に以下の方法があります。
・社内のコピー機
・スマートフォンアプリ
・印刷専門店やコンビニの機器
・スキャン代行サービス
それぞれ、かかる費用や時間に違いがあるので、自社に合った方法を検討してください。
スキャン後は、書類の種類に応じて適切な保存方法を選択しましょう。
電子化した書類にタイムスタンプ(インターネット上の手続きや電子文書の存在した日時の証明)が必要な場合は、電子帳簿保存法に基づき、約2ヶ月以内に手続きを済ませる必要があります。
さらに、取引年月日・取引金額・取引先名称などから検索可能な形式にしておくことも重要です。
なお、このような規定は何度も改正されており、今後も変更される可能性があるため、最新の情報を確認しておきましょう。
まとめ
電子化とデジタル化の違いについて紹介しました。デジタル技術を活用したアプローチは、ビジネスや社会のさまざまな領域で広く利用されています。
自社のみで行う電子化・デジタル化の導入では、スムーズに進まない、中々効率化につながらないといったトラブルが起きることがあります。
特に、セキュリティ対策が甘いままだと、会社に損害を与えるようなサイバー事故が起きる恐れもあります。
リスクヘッジのためにも、電子化・デジタル化導入には、ITの専門業者への相談を検討してみてください。